2024年08月16日

育つ力に寄り添う(愛恩便り2021年2月)

育つ力に寄り添う

 わたしたちが互いに愛し合うならば、神はわたしたちの内にとどまってくださり、神の愛がわたしたちの内で全うされているのです。( ヨハネの手紙 一 4:12  ) 


 ある時、私が幼稚園の園長であることを知って、次のような相談を持ちかけてきた人がいました。

 「私の子(K君)がもうすぐ3歳になるのですが、今イヤイヤ期の真っ最中で、保育園ですぐに遊具の取り合いになり友だちを叩いてしまうことが増えています。その時の様子を家で聞いても泣き出してしまったりすることが増えてしまって。どうしたら良いですか?」とのことでした。

 私は、実際にK君にお会いしたことがないので、「一般論ですが、」と前置きをして、思いつくことを幾つかお話ししました。

 今の時期のK君は、自分の中に何をしたいのかという思いがしっかり育ってきているからこそ、思い通りにいかないと我を張りたくなっているのでしょう。結果について説諭するより、例えば「K君はその遊具を独りで使おうとしていたんだね。」と、K君の気持ちに寄り添う言葉をかけて、K君が自分の気持ちは理解されているという思いを持ちつつ少しずつ自分で自分を把握する力を付けていくことができるようにすることが一つ目で、これは即効薬ではないけれど一番大切なこと。二つ目に、K君はまだそのような場の対処方法を知らないのだから、K君に「待っててね」「貸してって言ってね」「使って良いか聞いてね」と、その場に相応しく具体的に対処する言葉を簡潔に教えてあげること(まだ3歳にならないK君にとってはまだ難しかったかも・・・)。そして三つ目に、K君が友だちを叩きそうな状況になった時には、先にこちらから「K君、こんな時にも、友だちを叩かないで偉いね。」と声をかけて他の解決方法へ誘導し、更にその結果が成功体験につながるよう見守ること、などを思いつくままにお話ししました。

 数週間後に再度お会いした時に、私はその方から「お陰様で、K君は落ち着いて過ごしています。」と報告を受けましたが、それは私の助言によるのではなく、K君自身の成長力によって次の段階へと進んでいったのでしょう。イヤイヤ期のK君の思いを押さえ付けることもK君の思いをすべて満たしてあげることも好ましいこととは言えません。

 子どもたちは、各家庭や幼稚園で、家族や教職員や友だちと、たくさん心を通わせることによって自分を育てていきます。私たち大人はその過程を喜んだり悩んだりしている中で子どもたちはいつの間にか自分の力で成長していくように思われます。

 私が貢献したのは、助言の中身より、K君の父親があれこれ私を相手に話をすることで、K君に向かう心のゆとりが少し生まれたことだったのかもしれません。

posted by 聖ルカ住人 at 16:37| Comment(0) | 幼稚園だより | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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