一緒に絵本を読みましょう
子どもは自分で言語表現する以上に周りの人の言葉やその雰囲気を頭でもハートでも理解しているものです。もし、言葉で話す程度にしか理解できていないにしても、その場の雰囲気を体で感じていますし、そう感じていることを前提にして接してあげることが大切です。子どもが片言を話すようになったら、是非親子で絵本を読む機会をとってあげてください。
絵本にはテレビ番組やビデオとは違う良さがたくさんあります。その一つは、絵本は番組のペースではなく、親子のペースで読めることです。ある場面は繰り返し、ある場面はゆっくり、またある時は絵本に書いてないことも途中で付け加えたりしながら読めるのは絵本の素晴らしいところです。
かつて、私の息子が妻の膝の上で絵本を読んでもらっていました。2歳になる前に頃のことだったと思います。その息子の表情を見て改めて気付いたことがありました。子どもは絵本の世界に入り込みます。子どもはお母さんに絵本を読んでもらいながら、お母さんの耳から言葉を味わい、自分の目で絵を味わい、体全体で絵本の世界を体験しているのです。視線は真剣な表情で絵本の上を、時に一点に止まり、時に駆けめぐり、ページがめくられるとまた食い入るように新しいページに思いを集中します。この時の親と子の作り出すリズムは、決してテレビ番組やビデオでは生まれません。絵本の世界は、その親子にしかない聖なる場を創ります。読み手のお母さん(或いはお父さん)は、少しゆっくりかなと思うペースで落ち着いた静かな声で読み聞かせてあげてください。子どもはその時、絵本の世界を経験していると同時に絵本を通してお母さん(或いはお父さん)と一緒に生きる世界を味わっているのです。
テレビ番組やビデオの作品の中にも面白いものや興味を引くものはあります。楽しめる番組も沢山あるでしょう。でも、それは子どもが感じたり立ち止まって言葉を発したい時にも待ってはくれません。自分の感じることを自分のペースで心に捕らえ親と分かち合えることは、何物にも代えられない大切なことです。
絵本の読み聞かせをする時間を取ってあげてください。そのうち子どもの方からお気に入りの作品を持って「読んで」と言ってくるようになるでしょう。お母さんの朗読は子どもの情操を養います。読み終わった時も、その余韻を大切にしてあげてください。すぐにコマーシャルが流れたりせず、読み終わった後のわずかな沈黙も親子の読書という聖なる時を引き立ててくれることでしょう。