言葉かけの大切さ
昔、私は、赤ちゃんは小さくてまだ話せないしまだ理解できないから言葉かけは無駄だと考えているお母さんにお会いしたことがありました。
いいえ、赤ちゃんは何でも分かります。かりに百歩ゆずって、赤ちゃんはまだ言葉が分からないとしても、分かっているかのように言葉かけをしてあげることは大切なことなのです。まだ言葉の一つ一つの意味までは分からないとしても、赤ちゃんはお母さんが話しかける雰囲気や表情から、心の中で相当に強い反応を示しているのです。はじめのうちはごく大まかな快・不快という程度の反応かも知れませんが、お母さんの掛ける言葉が赤ちゃんの中に快適に入っていくこと、心地よく響くことは、赤ちゃんの精神的な成長にとって大切な「栄養」になります。また、言葉を獲得していく上でも大切なことなのです。
ダッコして優しく子守歌を歌いながら軽くトントンと叩いてあげたり(パッティングと言います)、周りの様子や赤ちゃんの気持ちを代わりに言葉にしてあげるような言葉かけも有効だと考えられています。
私たちが、満天の星を見上げても、はじめのうちは星の位置関係など見えませんが、幾度も幾度も夜空を見上げているうちに、そして星座を知るうちに、星は星座としてある程度のまとまりをもって認識できるようになるでしょう。赤ちゃんが言葉を理解していくのもこれと似たところがあります。お母さんの優しい声と言葉遣いによって自分に向けられる言葉を、幾度も幾度も耳にすることによって、赤ちゃんは自分の体験と言葉を結びつけ始めます。沢山のお話しの中から、赤ちゃんは、次第に重要な単語や言い回しをキャッチしはじめます。、
言葉をかけられることは快い、言葉を受けることは心地よい、という経験を沢山重ねることは、赤ちゃんにとって単に言葉を獲得するために有効なだけではなく、情緒の安定した豊かな精神性を育むための第一歩でもあります。
柔らかな声で、優しい言葉で、にこやかに沢山話しかけて上げましょう。