言葉をかけること
その人を造り上げるのに役立つ言葉を、必要に応じて語りなさい。(エフェソの信徒への手紙 4:29 )
日々、子どもたちにどのような言葉をかけているでしょうか。
例えば、子どもが小さな失敗をしてしまった場合、「そんな失敗を繰り返すなんて、ダメね!」という人もいれば、「よく頑張っているね。大丈夫、今にできるようになるから!」という人もいるでしょう。言葉を与える事は、大きな大理石の彫刻作品を創る作業にも似ています。同じ原石であってもやがて出来上がる作品は全く違うものになるように、私たち大人の言葉かけは、子どもの人格形成にも大きな影響を与えています。
私の友だちが、中学校時代に教師の一言に深く傷付いた経験を話してくれたことがあります。美術の授業中、彼は一所懸命にその課題に取り組んでいましたが、机の間を巡視していた教師が彼の所に来ると、彼はいきなり「あなた、何やってるの、もっとマジメにやりなさいよ!」と言われたというのです。自分なりに真剣に取り組んでいたにもかかわらずそのような言葉を受けた彼は、それ以来、美術の授業もその先生のこともすっかり嫌いになってしまいました。
彼がショックを受けたのも当然です。自分なりに心を込めて描いていた作品を否定されることは、彼自身が否定されることと同じだったのです。
私たちは、ことに子どもと関わる時、子どもの成長の流れに沿って子どもを受け止め、よい方向付けを与える言葉かけをすることが大切です。
トイレットトレーニングでの小さな一例です。
1歳半から2歳の頃、子どもはよくパンツにオシッコをしてしまった後で「オシッコ、出た」と教える時期があります。そのようなとき、「すぐによく教えたね。」と言葉をかけることが大切です。また、「オシッコ出るよ」と言った時は、例えトイレに間に合わなくても、「よく言えたね。自分でオシッコの出る時が分かるようになってきたね」と子どもの小さな成長を肯定的に認め、その方向付けを与える言葉をかけるように心掛けましょう。私たち大人がかける言葉の質と方向性は、子どもが生きる意欲や自信を獲得していく上で大きな影響を与えるのです。
例えば、いつも「○○しなくちゃダメでしょう!」、「どうしてそんなバカな事するの!」と、心に刻みつけられていけば、子どもの心がどのように方向つけられていくのかは容易に想像できるでしょう。
言葉かけは、人が他者にどのような思いをもって関わっているかということと深く関係しています。私たちは、責任のある大人として子どもたちに適切な言葉をかけるスキル(技術)を身につけていくことも必要です。日頃から子どもにどのような言葉を使って関わっているのかを振り返り、自分を整えていくことも大切なことになってくるのです。
私たちの基本的な生き方が、言葉になって表現されます。子どもたちの心の成長を支える言葉かけに心がけ参りましょう。