最近、「食育」という言葉がしきりに用いられています。この言葉の意味する範囲は広く、子どもの食生活全般に関わっています。保育雑誌などをみていると、子どもたちが食べる物の質や栄養に関わることから食事のマナーのことまで、もっと広く環境問題のことまでふくめて「食育」について論じられています。
今回は、朝食の大切さについて考えてみたいと思います。
文部科学省が「早寝、早起き、朝ごはん」というキャッチフレーズで国民運動を始めたのが2年前でした。子どもの基本的な生活習慣を家庭でしっかりと支え、その土台の上に家庭や地域の教育力を向上させようというのがこの運動のねらいであったと思います。
近年、朝食をとらない家庭が増え、朝食を食べないまま登園登校する子どもが増えて、そのことが幼稚園や学校に行く子どもたちに少なからぬ問題を引き起こしています。このことについて文部科学省でも見過ごすことができなくなったのでしょう。
朝食をとらないと、一日を始める上での必要な栄養が足りなくなって、心身の発育と一日の生活リズムに悪影響が生じるようになります。
人は眠りに入るときに自動的に体温を下げようとします。寝付くときに汗をかく人が多いのもそのためです。そして、朝、私たちが再び活動を始めるときに、朝食を取って栄養を体内に取り入れ、体温を上昇させることが必要になります。私たちは、朝の食事をすることで、消化吸収の働きが活発になり、体内に取り入れられた栄養が脳にも運ばれて、心身共の活性化し一日の働きが始まっていきます。こうして一日の生活のリズムが作られるのです。
食育の第一歩として、各ご家庭で、是非「早寝、早起き、朝ごはん」を心掛けてください。
空腹では注意力が散漫になり、精神的にも不安定になります。朝の栄養が不足して血糖値が下がると活動意欲が低下するのだそうです。こうした状態が続くと、低体温状態になりやすく、体の免疫力が低下して風邪を引きやすくなったりすることにもつながります。
各ご家庭でも朝は忙しいことでしょう。でも、手の込んだ料理をしなくとも、栄養のバランスを考えて質の高い朝食を心掛けてください。ご飯やパンや麺類などの炭水化物、魚や肉や卵などあるいは納豆や豆腐のタンパク質、それにビタミンやミネラルを含んだ野菜や果物、タンパク質やカルシウムを含んだ牛乳やヨーグルトなどから、上手に組み合わせて、一日の生活を始めるよい方向付けとなる朝食が望まれます。
食事は、私たちが神から与えられたいのちを心身共に健康に管理し育てていく上での基本です。「食欲の秋」を楽しく迎えるためにも、良い生活リズムの中で、朝食が取れますように。もちろん、できる限り個食(独りで食事をすること)を避け、楽しい会話という違う意味での栄養素を加えることも忘れずに。
(あいりんだより2008年9月)