このごろテレビやラジオのニュースの内容で気になることがあります。
私には考えられないような暴力事件が起こり、暴力をふるった人が逮捕され、「調べによると、容疑者は被害者のAさんと目が合ってむかついたから殴りつけたと話しているようです。」というような報道をしばしば耳にします。このような視線を向けることを今の若者言葉では「ガンをつける」と言うのでしょうか。
私が気になるのは、「目が合った」ことが相手を攻撃するきっかけになっていることです。
皆さんは「目が合う」と言うことから何を連想するでしょう。私は「目が合う」ことから親子関係の出発を思い起こします。お母さんは生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて赤ちゃんと目を合わせ、優しい言葉をかけたり、笑顔をつくったり、授乳したりします。そしていつの間にか、どちらからともなくお互いに目を合わせて笑顔を交わし合うようなります。
かつて、赤ちゃんの前でお母さんが赤ちゃんの笑顔や声に全く反応しないとどうなるかの実験をした人がいました。赤ちゃんにはちょっと気の毒でしたが、生後7から8ヶ月の赤ちゃんの前でお母さんがほんの3分ほど能面のようになって全く反応しないようにしてみたのです。するとその僅かの時間の間に、赤ちゃんの表情は見る見る不安そうになり、赤ちゃんはべそをかき始めてしまいました。人が目を合わせて笑顔を交わし合うことは、人間関係の最も基本的なことであり、信頼関係の始まりであると言うことが出来ます。そして、知らない人同士の場合でも、目が合えばお互いにニッコリし合ったり、軽く挨拶をする文化のある国もあります。
互いに目が合ったから相手を威嚇したり攻撃したりするのはなぜなのでしょう。もしかしたらそれは縄張りを主張し合いそれを侵したら攻撃する「4つ足動物」の行為なのではないでしょうか。もしかしたら、「相手と目が合ったからむかついた」とか「睨んできたから睨み返した」というのは、人が小さいときに身に付けてきた「人と目が合ったら微笑み返す」という、人としての基本的な信頼感を身に付け育む機会がないままに過ごしてきた人なのかと考えてしまいます。
私たち大人は、自分の周りの子どもたちが幼いときから、笑顔で温かな視線をおくるように心がけてみてはどうでしょう。