2022年12月09日

『「基本のき」から』

「基本のき」から

 わたしのこれらの言葉を聞いて行う人は皆、岩の上に自分の家を建てた賢い人に似ている。(マタイによる福音書第7章24節)

 もし「園長としてどのような幼稚園をつくろうとしているのか」と問われたら、私は「奇抜なことをして目立とうとするのではなく、当たり前のことが当たり前にできていて、しかもどこか深さが違う」と思っていただける幼稚園を創っていきたい、と答えたいと思います。また、実際にこの幼稚園がそうなるように努めていきたいと思っています。

 近年、商品にしても商店にしても、「特徴付け」や「差別化」が課題となっています。それは、他との違いを強調して売り込むための戦術でもありますが、時として本質とは関係ない見栄えの華やかさや形式に流され、かえって本当に大切なことを見失わせることにもなりかねません。

 幼稚園は人間の成長に仕える教育の場です。その事以外に何か品物を売るのに似た園の「特徴付け」や「差別化」が前面に出て良いはずがありません。子どもたちの命の育みのために必要なこと、適切なこと、相応しいことを、日々心を込めて行っていく中で、幼稚園は幼稚園として成長し、そこに「特徴付け」も自ずと生まれ大きくなっていくことでしょう。そのような意味でも、私は「当たり前のことが当たり前にできていて、しかもどこか深さが違う」という幼稚園を育てていきたいと思うのです。

 そうであれば、幼稚園でも各ご家庭でも、子育ての「基本のき」を大切にしていきたいと思います。例えば、日中は屋外でお友だちと一緒に十分に体を動かして遊ぶこと、子どもの経験を共感しながら聴くことを中心とした心の通う会話をすること、楽しい雰囲気での落ち着いた食事をすること、善悪のけじめをつけること、子どもと一緒に質の高い絵本の読み聞かせをすること、人の業を越えた大きな存在に向かって祈ること等々、子育ての「基本のき」を実践していきたいと思うのです。それは、子育てに限らず生きる上での「基本のき」であり、むしろ事柄そのものより、私たちの生活全般にいかにして「愛」を盛り込んで子どもと心を通わせるかということの大切さであると言えそうです。

 子どもたちは、入園、進級して二ヶ月が経ち、幼稚園の生活にも慣れてリズムをつかみ、次第に友だち関係も広がり、表現も大きく力強くなってきているようです。子どもたちが十分に自分を表現しながら生活していけるよう、幼稚園では一人ひとりを大切にするという幼児教育の「基本のき」に絶えず立ち帰りたいと思います。どうぞ、ご家庭でも温かな心の触れ合いと生活習慣の形成という「基本のき」に努めていただければと思います。その中から、他園では真似ることのできない愛隣幼稚園の特徴が育ち、その特徴が更に私たちを育ててくれるようになると確信しています。

 (『あいりんだより』2007年6月)

posted by 聖ルカ住人 at 09:30| Comment(0) | 幼稚園だより | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

赤ちゃんと視線を交わすこと

 赤ちゃんと視線を交わすこと

 私たちは、生まれたばかりの赤ちゃんでも大人が思っているよりずっと多くのことを認知していることを知っておく必要があります。いや、それは赤ちゃんがまだお母さんのお腹にいるときから言えることです。
 赤ちゃんの胎動が始まったら、まだお腹の中にいるときから時々お腹を優しく撫でて言葉をかけてあげてください。赤ちゃんが、やがて「自分は大事なひとりの存在としてこの世に命を与えられたのだ、自分を超えた大きな力に支えられてしかも喜ばれてこの世に命を与えられたのだ」という実感を持てるように、生まれる前からお母さんもお父さんも赤ちゃんが安心し安定した環境の中に生まれてこられるようにしてあげてください。
 さて、生まれたばかりの赤ちゃんにも視力があります。初めのうちはかなりボンヤリしているようなのですか、少なくとも、お母さんが自分の腕に赤ちゃんを抱いた時にお母さんの顔をひとまとまりとして認識するだけの知覚はあるようです。
 神さまは人間を本当に不思議にうまく造ってくださっています。赤ちゃんにとってはこのダッコされた顔と顔の距離が人間関係の出発点と考えることが出来ます。
 お母さんが、この距離で柔らかな表情で優しい言葉を掛けてあげることによって、お腹の中では「闇」であった自分の人生が「光」の人生に変わるのです。この時、お母さんは赤ちゃんに「光の人生は良いものだ」「光の世界も良いものだ」という経験を沢山させてあげてほしいのです。
 赤ちゃんが「生きることは楽しい、素晴らしい」という経験を沢山重ねることが出来ますように。そして初めて経験する「他者」を全面的に信頼して、共にいることは何と心地よいことなのだろう」ということを赤ちゃんが体で知り、体にしみ込ませることが出来るように心掛けてあげましょう。
 赤ちゃんは次第に動くものを目で追うようになります。赤ちゃんにとって一番身近であり目に入る存在はお母さんであり、一番親しみを感じるようになるのがお母さんの顔なのです。赤ちゃんにとって、自分に関心を持ってくれて、自分を受け入れてくれて、自分の気持ちに沿った言葉をかけてくれる「他者」が赤ちゃんの目にしっかりと入っています。
 これはとても大切なことです。例えばテレビがついていれば画面の動きは一方的に赤ちゃんの目に入ってきます。でも、その動きは赤ちゃんの気持ちや状況に沿ったものではありませんし、赤ちゃんのペースで働きかけてくるものではありません。自分の目に入ってくるものが、自分を認めてくれていて、赤ちゃんからのアクションにも反応してくれることで、赤ちゃんはまたその反応を目からも耳からも体中で心地よいこととして経験していくのです。
 この経験は、これからこの赤ちゃんが生きていく人間世界への良い方向付けになることなのです。「まだはっきり見えないからあまり働きかけなくても良い」などと考えないで、お母さんの素敵な優しい表情をまずお母さんの方から沢山赤ちゃんに見せて、お母さんと赤ちゃんの良い絆をつくってください。親と子の絆は初めからあるのではなく、このようにして赤ちゃんと一緒に創り上げていくものと考えましょう。




posted by 聖ルカ住人 at 09:03| Comment(0) | 子育て応援 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする